東京メンタルクリニック

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精神科医が解説
強迫性障害(OCD)の薬物療法

1980年頃、セロトニン再取り込み作用の強い三環系抗うつ薬であるアナフラニール(クロミプラミン)が強迫性障害(OCD)に有効である事が、大規模な研究調査で証明されました。
その後、アナフラニールに比べて遥かに副作用が数ないSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という種類の薬が開発されてからは、SSRIがOCD治療の第一選択薬となりました。

海外では、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、プロザック、レクサプロ、セレクサの6種類のSSRIが使用されています。
日本ではデプロメール、パキシル、ジェイゾロフトの3種類が発売されています。このうち、デプロメールとパキシルは厚生労働省より有効性が認められ、保険適応を持っています。

SSRIはうつ病の薬ですが、OCDの治療薬として使用する場合、うつ病に使用するよりも高用量が必要で、効果の発現もうつ病より長くかかります。
例えばデプロメールは、うつ病に対する最大使用量が150mg/日ですが、OCDに対する最大使用量は300mg/日であり、パキシルはうつ病では40mg/日なのに対し、OCDでは60mg/日程度の高用量まで増量して初めて効果が発現する事が多いです。
ジェイゾロフトも日本では最大使用量100mg/日、海外では200mg/日の使用が標準的です。
また、OCDにSSRIの効果が現れるには大体6週間から8週間を要し、効果判定までに10週から12週はSSRI単剤による治療を継続する事が一般的です。
このように、OCDの薬物療法は現在SSRIが中心的な役割を果たしていますが、40%〜60%の方はSSRIやアナフラニールに十分な反応を示しません。

OCDの症状評価尺度としては、「Y-BOCS」というスケールを使います。一般的にこのスケールで35%以上の減少が見られなければ効果がないとみなされます。
SSRIを十分量、十分期間使用しても効果が見られない場合、作用機序の異なる薬剤を付加する方法があります。

治療抵抗性のOCDに対する治療戦略のアルゴリズムに、最初にSSRIに反応がない場合、違うSSRIに変更するか、もしくは何らかの付加療法を行うことが推奨されています。
様々な薬剤の付加療法を検証したところ、抗精神病薬が有効である事が証明されました。
OCDに対してSSRIによる治療で十分な効果が見られない場合でも、リスペリドン、ジプレキサ、セロクエルのような非定型抗精神病薬を少量付加する事で、効果が見られる事が二重盲検法のメタアナリシス解析で証明されています。
負荷する抗精神病薬の種類の検討もなされており、セレネースとリスペリドンの付加には強い有効性が認められましたが、ジプレキサ、セロクエルでは有用性が示されませんでした。

抗精神病薬の付加が効果的である症例の特徴には、チック統合失調症型感情障害の合併に関係があるという報告もあります。
現在様々な研究データから、SSRIによる治療では50%程度しか改善しない事がわかっており、改善しない方のうちの約半数は抗精神病薬の付加で改善すると示されております。
SSRIに十分な反応が見られない場合、抗精神病薬の付加を検討してみるべきと思います。

強迫性障害の薬物療法の実際

まず、SSRIを十分量、十分期間服用します。服用するSSRIはOCDに保険適応を持つデプロメール、パロキセチンが第一選択薬に上がります。
しかし、効果不十分であったり、副作用が生じる事がわかっている場合、ジェイゾロフトが選択される場合も多いです。

SSRIを服用するときは、飲みはじめの副作用を軽減するために少量から開始します。
デプロメールなら50mg/日、パキシルなら10-20mg/日程度から開始して、効果と副作用を注意深く観察します。1-2週ごとに、デプロメールは50mgずつ150mg/日まで、パキシルは10mgずつ50mg/日まで増量します。
それでも無効であれば、最大量まで増量します。
症状改善後は副作用が見られなければそのままの量で継続しても問題ありません。ゆっくりと減量していき、デプロメールは50-100mg/日、パキシルは10-20mg/日を維持量とする事も推奨されています。

はじめに処方されたSSRIが十分量、十分期間服用しても効果が無ければ、他のSSRIに変更を検討します。
切り替えは漸減漸増で1-2週間ごとに一方を減らし、一方を増量してゆっくり行います。

SSRIで効果が見られない場合、アナフラニールへの変更も検討に入れます。
アナフラニールはSSRIに比べて口渇、便秘、立ちくらみなどの副作用が強いですが、血中濃度を早く上げるための点滴もあり、これまでOCDの治療薬としてはかなり使用されてきました。
または、抗精神病薬のごく少量の付加を考慮します。最もエビデンスのあるリスパダールが第一選択薬となりますが、効果が乏しい場合や、副作用が生じたときにはジプレキサやセロクエルに変更します。
非定型精神病薬を付加する場合には、副作用の出現に注意を払いながらごく少量から開始し、漸増します。リスパダールなら0.5mg /日、ジプレキサなら2.5mg/日クエチアピンなら25mg/日程度を、使用中のSSRIに上乗せしてみると良いと思います。

SSRIの副作用について

SSRIは三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬と呼ばれる薬と比較すると抗コリン作用、抗ヒスタミン作用、抗アドレナリン作用などがないため、副作用が非常に少ない薬です。
SSRIの副作用として一般的に見られるのは、吐気と眠気です。吐気は投与開始時に頻度が高いですが、制吐薬を使用して服薬を継続すると消失する事がほとんどです。

非常に稀ですが、注意すべき副作用としてActivation Syndromeと呼ばれ、抗うつ薬の投与初期や増量時などに一時的に、不安、焦燥感、衝動性が現れる事があります。
今のところ頻度や因果関係ははっきりしていません。

もう一つ注意すべき副作用は、離脱症候群です。
SSRIの急激な減量や中断により、一過性の目眩、異常感覚、不眠、頭痛などが薬物中止後5日内に現れます。
さらに非常に稀ではありますが、セロトニン症候群と呼ばれ、高容量のSSRIを使用したときに、軽い意識障害、軽躁、焦燥、発汗、下痢、震戦などが現れる事があります。
SSRIを中止すれば速やかに消失します。

強迫性障害(OCD)の薬物療法・まとめ

  • SSRIという薬を十分量・十分期間服用する必要があります
  • SSRIが無効な場合、アナフラニールへの変更も検討します。
  • それでも無効な場合、抗精神病薬を少量付加すると効果が増強されます。
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監修 : 東京メンタルクリニック

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